日本でギャンブルというと、公営ギャンブルである「宝くじ」「競馬」「競輪」「競艇」「オートレース」「パチンコ」「スロット」があります。
他にも、海外では既に行われ今度日本にも誘致される「カジノ」などがあります。
また、ギャンブルではないが、「ゲームセンター」「縁日などであるくじ引き」などもギャンブル性があります。
このようなギャンブルもしくはギャンブル性のあるものは”基本的に”胴元が勝つようになっているため、多くの人が負けます。
では、なぜ人は懲りもせず再びやってしまうのだろうか?
理由は、心理学用語である「認知的不協和」が密接に関わっているからです。
認知的不協和とは
「認知的不協和理論」はアメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された心理学の理論です。
簡単に意味を説明すると
【人は2つの矛盾した意見、行動、信念がある場合、その矛盾を解消しようと自分の態度(考え)や行動を変化させる】
というものです。
あまり聞かない言葉に見えますが、実は私たちも無意識に「認知的不協和」に基づく行動をとっています。
もっと分かりやすくなるように実際にフェスティンガーが行った実験について紹介します。
フェスティンガーの実験
フェスティンガーは学生を被験者に実験を行いました。
【STEP1】学生を以下の2群に分けます。
①20ドルを報酬として貰い、退屈な単純作業を行う群
②1ドルを報酬として貰い退屈な単純作業を行う群
【STEP2】次にフェスティンガーは学生に対し、次の学生の被検者に『この作業はとても面白かった』と言うように指示します。
【STEP3】指示通りに学生が伝えた後には、それぞれの報酬(1ドルor20ドル)を与えます。
【STEP4】最後にフェスティンガーが学生に対して実験に対する感想などを聞きます。
このような実験でした。
フェスティンガーの実験 結果
この実験は、学生のこの作業に対する評価が肝となっています。
それは、この退屈な作業に対する評価(面白さなど)が「1ドルを報酬として貰っている群」の方が「20ドルを報酬として貰っている群」より高く、また次の被験者に『この作業はとても面白かった』と面白さを伝えるのが上手かったという結果であったことです。
1ドルしか貰わずに退屈な実験をした群の方が高評価というのは矛盾しているように思えますね。
これは、この矛盾の中に認知的不協和という心理が働いているからです。
フェスティンガーの実験 解説
両者の違いは、
「20ドルを報酬としてもらった群」は退屈な作業をしたが報酬として20ドルを貰うことができたため「退屈な作業をするという行動」と「十分な報酬を貰った」という事実の間に不協和(矛盾)が生じなかった。
一方
「1ドルを報酬としてもらった群」は退屈な作業をしたにも関わらず1ドルしか報酬として貰わなかった。
この際に「退屈な作業をするという行動」と「少ない報酬に対する感情」の間に不協和が生じます。
この不協和を埋めるため「行動(つまり退屈な作業)」を「面白い」と思うことにより価値を高め、「少ない報酬に対する感情」との不協和(矛盾)を解消しました。
日常生活での認知的不協和
日常生活でも認知的不協和に基づく行動を人はとっています。
よくある例として、喫煙者の例が挙げられます。
認知1 | 私はタバコを吸う |
認知2 | タバコを吸うと肺癌になりやすい |
「認知1」と「認知2」の間には不協和(矛盾)がありますね。
人はこの状態では不快感を感じます。
そのため・・・
認知1 | 私、喫煙者Aは煙草を吸う |
認知2 | 煙草を吸うと肺ガンになりやすい |
認知3 | タバコを吸っている人でも長寿の人はいる |
認知3を追加することにより、不協和(矛盾)を改善します。
「人付き合いだから仕方がない」や「ストレス解消のためだから仕方がない」などと考えることも同様です。
これがフェスティンガーが提唱した認知的不協和理論です。
ギャンブルで負けた人
①「負ける」と分かっているが、また「行ってしまう」人
②「負け続けている」のに損切りをせず「続けてしまう」人
③「勝ち逃げできる」のに、負けるまで深「追いしてしまう」人
④「決めた予算」より「多く使ってしまう」人
ギャンブルをしていて以上のような人はいないでしょうか?
ここにも認知的不協和が働いています。
認知1 | 認知2 | 新たな認知3 | |
① | 「負けるだろう」 | 「行く」 | 「久しぶりだから」 「今までの分を取り返せるはず」 「気晴らしのため」 |
② | 「負け続けている」 | 「続ける」 | 「どこかで逆転できるはず」 「今日は誕生日だから少しくらい負けていいだろう」 「前回勝ったから」 |
③ | 「勝ち逃げできる」 | 「深追いする」 | 「さらに勝てるはず」 「まだ勝っているから少しくらい負けても大丈夫」 「後、3000円分だけ」 |
④ | 「予算を超えた」 | 「勝負を続ける」 | 「後少しだけ」 「もう少しやれば当たるはず」 |
既にある認知1と認知2の不協和(矛盾)を改善するために、新たな認知3を作ります。
ギャンブルで「負ける人」or「負けているけど止められない人」の中にはこの特徴的な心理が働いているため、簡単に止めることができません。
ギャンブルで負けのスパイラルに陥らないために
ギャンブルをする人の中では
A「ギャンブルをしない人」
A’「勝てる人」
B「勝ち負けを繰り返してプラマイゼロな人」
C「少し負ける人」
D「大負けする人」に分かれます。
ギャンブルで負のスパイラルに陥らないためには
D→C→B→A’「勝てる人」またはDorCorB→A「ギャンブルをしない人」へステップアップしていくことが目標になります。
そのための対策としては「自らの根拠のない認知」を介入させないためにも
・収支表をつけて客観的な事実(負け続けている)を理解する
・軍資金以上を持っていかない
・◯◯円以上勝ったら”何があっても絶対に止める”と決める
・不確定的事項(オカルト・運)に惑わされない
というように事前に「何があっても絶対に守らなければならない決まり」を作っておくことが大切です。
ここで、この決まりを破るため新たな認知を作ってしまっては意味がないので、場合により第三者(友達・家族)などと決まりを共有することも対策になります。
ギャンブルで負けると、何かと言い訳を作りがちですが、負けは負け。
この現実を受け止めて、次回は同じ過ちを犯さないようにすることが大切です。
まとめ
・「認知的不協和理論」はフェスティンガーによって提唱された心理学理論で【人は2つの矛盾した意見、行動、信念がある場合、その矛盾を解消しようと自分の態度(考え)や行動を変化させる】という理論
・「1ドルで退屈な作業をさせられた学生」と「20ドルで退屈な作業をさせられた学生」では「1ドルで退屈な作業をさせられた学生」の方が作業に対する評価(楽しさ)が高かった
・日常でも認知的不協和が働いている
・そして、ギャンブルでも同様に認知的不協和が働いている
・ギャンブルで負けないため、もしくは勝つためには事前に必ず守る決まりを作っておくことが大切
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